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<<   作成日時 : 2007/11/21 15:32   >>

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私が幼かった頃、日本はまだ好景気が続き、働き盛りだった父は日を跨ぐほど遅くまで残業をして帰宅していた。だから、平日の夜に父の顔を見ることは滅多になかった。


あの頃は、全てが父を中心に家族の時間が回っていたように思う。殊に父親っ子だった私は、父の帰宅が遅く、父の不在の家というのは、幼いながらに何処かしら不安なものがあった。
夏の暑さが過ぎ、秋となって音まで澄んで来るようになると、遅く返る父のために、母が酒の肴を用意する厨の音もはっきりと聞こえるようになってくる。そして、寒さを向かえるようになれば、それはなおさらだった。母が落とす厨の水音、家中の時計の音、梁の軋む音など、寝つきの悪い私は布団にもぐりながら、眠りに落ちるまでそのいろいろな音を聞き分けた。
風が強く吹く晩はことさら眠りが浅いので、何度も寝返りを打っては、うつらうつらと耳に飛び込んで来る音を聞き、まだ父が帰っていないことを確認していた。
ある木枯らしが吹く夜、中々眠れないので、「早く寝なさいよ」と母に小言を言われつつも、炬燵にすこしだけ足を入れて忙しく厨仕事をしている母の背の見えるところに座し、片付け忘れていた絵本を手にとって読んでいた。
木戸を雨戸を、木枯らしが叩いては通り過ぎていく。一陣の強い風に、隣の家の門がガタンと開いた音が聞こえた。裏の家の犬が、何を聞いたのかしきりに吼えている。母は、何を作っているのか、父の好きな野菜を弱い厨の灯の元で揚げていた。そのうち、カツカツと革靴の踵を鳴らす音が、家へと近づいてくるのが聞こえた。
「お父さん!」
駆け出すままに玄関へ行くと、父の手が勢いよくドアを開けた。ドアが開くとともに木枯らしが吹き込んだ。父の肩の向こうの夜空には、一瞬だが美しい星空が見えていた。
「お父さんおかえりなさい。」父は、トレンチコートの立てた襟に埋まった、まだ仕事の緊張がとれない顔を私に向けると、「ただいま」と言ったまま私の手を引いて茶の間に顔を出した。
「おかえりなさい。今日も、遅いわねぇ。」厨から顔を出した母は、慣れきってしまったように言っていたが、父が帰ってきたという安堵の言葉にも思えた。
木枯らしと帰ってきた父は、脱いだコートを母にあずけながら、「ほんとに寒くなったなぁ。」といつもの父の顔に戻っていた。

 星々を吹いて木枯らし帰りたる

 ☆Seasons word☆ 木枯らし(季節・冬)
 ☆Sweets Menu☆ WinterVegetable Chips(冬野菜のチップス)

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