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<<   作成日時 : 2006/07/14 01:22   >>

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歴史ある町を楽しく散策していたが、蒸し暑さと喉の渇きと歩き疲れた娘が、どこかで一休みしようよと言い出したので、私も夫もそれに従って、紺地に朱の文字で「氷」の旗が軒先にはためく甘味処へと入った。やはり、皆考えることは同じなのか、昼下がりの甘味処は、地元の人と観光客で混み合っていた。私達は、とりあえず待ち合い席の椅子に腰をおろした。こういうとき、子どもを連れていると、お店の人が気を利かせてくれることが少なくない。席が空くのを少し待つ間に、冷たい緑茶を、まっさきに疲れてぼんやりしている娘にふるまってくれた。それから、私と夫にも冷茶をふるまってくれた。娘は、息つく暇もなく緑茶を飲み干すと、少し調子が上がってきたのか、レジカウンターの横にある金魚鉢のところまで行き、黒と赤の出目金がゆらゆらと動くのを見入っている。



幼児という年齢を抜け出したものの、金魚鉢に張り付いて、まだ幼さの残る娘の後姿に、なぜか笑みを誘われた。それにしても、休日はあっという間に過ぎていくと思いながら、待ち合い席から見える客席の中に、ひとり、何処かで会ったことがあるような若い女性客が、やはり彼女と同じ年齢ぐらいの男の人と向かい合って座っているのが見えた。彼女には、何処で会ったのだろう…。あれこれと記憶を辿っていくうちに、はっきりと思い出して、私は小さく声をあげた。夫がどうしたのと、私の方を向いたので、何でもないと言いながら、手に持っていた緑茶のグラスを、お盆の上へと返した。
所用で出かけた帰り、いつものモノレールに発車少し前に乗りこんだ時だった。始発駅から乗ったことと、夜遅い時間ということもあって、乗り込んだ車両にはポツポツとした人が乗っていなかった。空いているボックス席の窓側にきめて座ると、まもなくモノレールが動き出した。駅を離れると、夜の闇にモノレールが吸い込まれてゆく。高いところを走るモノレールからは、街灯りがキラキラと見えていた。乗り込んだ時の息の弾みを落ち着かせるように、車窓に凭れるように頬杖をつくと、窓のガラスに映って、通路を挟んでとなりのボックス席の窓側に、ひとり座っている女性がいるのが見えた。彼女も同じように頬杖をついていたが、その手は口元におかれ、瞳は車両内の明かりを反射するように潤んでいた。一瞬、彼女は泣いているのでは?と、車窓から、となりのボックス席の方へと視線を移した。やはり、彼女の頬には泣きはらした後が見て取れた。そして、今だ涙があふれるのをこらえるようにして、必死に口元に手をあてているようだった。彼女を見ているのが憚られて、何も気がついていないようにして、また、車窓に映る彼女を私は見つめた。
彼女の若さから、咄嗟に「恋」の一文字が頭を過ぎった。彼女の頬に涙がひとすじこぼれた。それは恋をしている人の涙に見えた。こらえきれない悲しみが、彼女のすべてを包み込んしまっているようだった。静かな車両の中に、彼女の鼻を啜る音が響いた。それにも反応をしないように見せて、いつの間にか降り出した雨が、車窓に斜めに描く点線を見ていた。駅に停車するごとに、席が人で埋まっていき、乗り継ぎ線のある駅で人が大勢降りて行くまでの少しの間、彼女から目を離すことができたが、彼女の涙を見てしまったことが、いつまでも私の心を騒がせていた。
人が大勢降りていった後、私も彼女も同じように車両に残っていた。雨脚がだんだんと強まっていた。車窓に映る彼女も、雨の滲みの中にあった。彼女は掌で目元を拭うと、深く息をして、泣きはらした頬を車窓へと寄せている。そうして、2つ3つ駅を過ぎたところで彼女はモノレールを降りて行った。見える限り、私は彼女の背中を見送った。
その彼女を、また甘味処で見かけることになった偶然…。
席が空いたようで、案内する店員について、娘がまっさきについて行く。娘についていきながら、彼女のいる席の横をゆっくり通りすぎた。ちらと見た限り、彼女には微笑が溢れていた。そして彼女は、まさに恋の途中にいるように見えた。
お品書きを開き、娘と夫がか蜜豆かかき氷で迷っている。私といえば、彼女の前にありながら、あまり手をつけられていなさそうだった白玉を思い、「これにしようかな」と、お品書きの白玉を指した。

 白玉をはさんで恋の募りたる

*出会えた季語* 白玉 (季節・夏)
*Sweets  Menu* Fruits Siratama (フルーツ白玉) 

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